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2009年6月27日 (土)

考える野球

去る6月24日、アグリあなんスタジアムで、母校城南高校野球部と小松島高校野球部の試合があった。

練習試合ではなく、公式戦でもないこの試合は地元新聞にも取り上げられた。

なぜか、というと、この試合に出場するのは3年生だけ、という異例の試合だからだ。

 

ご存じのように3年生は7月に開催される夏の甲子園大会に繋がる地方大会に敗退すれば、それで高校野球という、ある種特別視される時間を終えてしまう。

地方大会のベンチ入りメンバーは20名。

今年の母校は総勢45名のいわゆる大所帯。

最後の大会にベンチ入りできない3年生も出てくる。

その彼らを中心とした試合である。

新聞記事には半ば「思い出作り」とか「監督の粋な計らい」というような言葉が並んでいたが、観戦した私は決してそれだけとは思わなかった。

 

もちろん、そういったセンチメンタリズム的要素を含んだ試合と言われればそれはそれで間違ってはいないだろう。

しかし、それは「様々な角度から見」たときの、ひとつの見え方にしか過ぎず、野球の指導者たちが仮にその一言で片付けてしまっているとすれば、その指導者の、少なくとも「チーム作り」という点における能力には疑問を持たずにはいられない。

 

強いところが必ず勝てるという法則は一戦必勝の高校野球には通用しない。

しかも、大会に合わせてあらゆるコンディションを整えることはプロでさえ難しい。

そして精神的にも最後の大会となると緊張すること尚更である。

 

この試合はまさしく夏の予選への前哨戦であり、甲子園という大舞台に行き着くまでの経緯を知った両校の監督であるからこそ、大きな意味を感じているのではないだろうか。

P1040059

 http://jonan-bbc-ob.betoku.jp/ 

  ↑↑(試合の模様はこちら)↑↑

  

目の前で、メンバー入りできなかった同級生や先輩が必死に頑張っている。

それをベンチから、あるいはスタンドから声を枯らし応援する。

父兄を始め、200名を超えるスタンドの雰囲気。

もちろん、電光掲示板の使用やウグイス嬢のアナウンスなど、全ては本番と同じである。

P1040054  

 

 

それを見たレギュラー陣はどう感じるだろうか。

熱い想いをより具体的に抱くのではないだろうか。

勝てば「今度は俺たちの番だ!」

負けても「俺たちが仇を取ってやる」

そう奮い立つのではないだろうか。

そして予選を迎えるのである。

否が応でも勢いは付く。

付かざるを得ない。

 

選手のモチベーションを更に高め、本番で緊張など感じさせないほどいい感じでプレーできるように持っていく、まさにチームを勝てる方向に導くための前哨戦。

それがこの試合の意味だ。

前哨戦での流れがチームに勢いを付ける。

 

こういう流れを作るためには様々な準備が必要である。

そして、その準備の中で、何よりも大切なのは選手に対する「見せ方」である。

「思い出作りをしよう」ではなく、「おまえたちが予選を勝ち抜くための勢いを作るんだ」としっかりと意味を伝える。

ビジネスの世界で一流になっている人たちではこういう手法を取ることは珍しいことではない。

ビジネスはスポーツに習うところが大きい。

しかしその反対はない。

スポーツの指導者にはそれを知る人が少ないからである。

 

常々思うことだが、技術指導ばかりに目を向けている指導者がどれだけ多いことか。

経営者感覚を持て、という言葉がビジネス界にはあるが、監督感覚を持て、というスポーツ指導者は私の知っている限りいない。

これは何も監督になれ、と言っているのではない。

成長し続ける企業になるためには、マクロ的に仕事の流れを読む、または掴むことが必要なように、勝ち続けるチームになるためにも同じ事が必要だろうと思うだけである。

 

徳島の名監督、池田高校の故 蔦文也監督は、金属バットの導入と共に、それを使った勝ち方を組み立てた。

もちろん技術も教えただろう。

しかし、彼は「打ち方」だけでなく、「それを使った勝ち方」を教えたのだ。

だから「やまびこ打線」は強力だった。

 

「人、物、金」をいつどのように使い(その順序、つまり「時」も含めて)、どのように活かすのか、それが成長の鍵であるということは否定できないところだし、経営者は常にその部分に考えを張り巡らせているものである。

野球も同じである。

蔦監督は金属バットという「物」を活かした。

他の指導者がそこに手を着けていない「時」に。

今回の試合は、大会にベンチ入りできない3年生という「人」をチームのために活かした。

3年生最後の大会直前という「時」に。

夏の大会が終わってからでは、この「時」を逸する。

そして、それは彼らにとっても大きな価値のある経験になった。

同時にレギュラー陣全員には高ぶる勢いを与えることになっただろう。

選手を活かしきるための前哨戦。

両校の監督はその大切な役割をベンチ入りできない3年生に任せたのだ。

そしてそれは彼らにしかできないことである。

見事な戦略、としか言いようがない。

 

レギュラー陣は、夏の大会前にありがちな「負けたら終わりだ」という考えよりも、「勝ち続けるんだ」という強い想いで試合には臨める。

仮に夏の大会、敗退しても残る「物」が全く違ってくる。

その想いは後輩が次に繋げる。

勝つんだ、という意識がチームの流れを作る。

この戦略は選手個々の、また、チーム全体の意識すら変える。

 

考える野球をしなければ勝てない時代なのだ。

考えている「つもり」ではダメである。

指導者が型にはまるとチームの成長はない。

スポーツの指導者がビジネスから学ぶこともぜひやってほしいと思う。

 

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コメント

感動しました!
うちの息子も野球まだやってます。
大学でなくて草野球チームで・・
店の野球チームを来年までに結成したいと思ってるんですが・・なかなか大変ですね。
昨日、甲子園の予選抽選があったけど、どのチームも頑張って欲しいですね。
甲子園に出ると言う夢は高校の3年間しかないから・・・観戦にはいつでもいけるけど。又、感動とドラマが始まりますね。

投稿: あやあや | 2009年6月27日 (土) 16時27分

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